広報の仕事は、プレスリリースを書くだけではありません。情報を集め、文章を整え、社内で確認し、SNSやWebサイトへ展開し、掲載後の反応まで確認します。
こうした作業の一部は生成AIと相性がよく、特に文章の下書きや情報整理、複数パターンの作成では作業時間を短くできます。実際、日本広報学会の調査では、国内の広報部門で生成AIを導入している回答企業が37.2%あり、「コピーやタイトルの案だし」「記事要約や情報収集」が利用業務の上位でした。
広報で生成AIを使うときは、AIに最終判断まで任せるのではなく「下書き・整理・案出しをAI」「事実確認・社外公開の判断を人」と分けるのが基本です。
この記事では、広報初心者でも取り入れやすい生成AIの使い方を、具体的な業務に沿って解説します。
広報で生成AIを使うと何が変わる?
生成AIは、広報担当者の代わりに判断するものではなく、文章作成や情報整理の負担を減らす補助役として使うと活用しやすくなります。
たとえば、新サービスを発表するとします。担当者はサービスの特徴や価格、提供開始日、対象者などの情報を整理しなければなりません。
そこからプレスリリースの構成を考え、タイトルを作り、本文を書き、SNS用に短くするところまで一人で行うと、それなりに時間がかかります。
生成AIなら、事実関係を整理したメモを渡して、構成案やタイトル案、SNS向けの文章を作らせることができます。
AIに渡す情報は「事実」と「AIに考えてほしい部分」を分けると、修正しやすくなります。日付・金額・固有名詞などは特に元情報を確認してから使いましょう。
広報に生成AIを使う方法7選
最初から広報業務すべてをAI化する必要はありません。まずは文章の下書きや案出しのように、人が確認しやすい作業から始めるのがおすすめです。
1.プレスリリースの構成を作る
最初に使いやすいのが構成作成です。
新商品や新サービスについて、AIへ「誰に向けた発表なのか」「何が新しいのか」「どんな課題を解決するのか」などの情報を渡します。
すると、タイトル、リード文、本文、会社情報などの構成案を整理できます。ゼロから文章を書き始めるより、先に骨組みを作った方が修正もしやすくなります。
2.プレスリリースのタイトル案を出す
タイトルは一つだけ考えるより、複数案を並べた方が比較しやすくなります。
たとえば「ニュース性を重視」「数字を入れる」「利用者の課題を起点にする」など、切り口を指定して複数案を作ってもらいます。
ただし、AIが出したタイトルをそのまま採用する必要はありません。実際のサービス内容と一致しているか、誇張になっていないかを人が確認します。
タイトル案を作るときは「10案ください」だけで終わらせず、「数字を使う案」「課題を強調する案」など切り口を指定すると比較しやすくなります。
3.プレスリリース本文を下書きする
必要な事実を箇条書きにしてAIへ渡し、本文の下書きを作る方法です。
このとき「足りない情報は勝手に補完せず、不明な部分は【要確認】と書く」と指定しておくと、事実と推測を分けやすくなります。
特に注意したいのは数字、日付、製品名、会社名、実績です。ここはAIの文章力よりも正確性を優先します。
4.SNS投稿へ書き換える
プレスリリースを公開したあと、その内容をSNSでも発信するケースがあります。
一つの文章をそのまま転載するのではなく、X向けに短くする、LinkedIn向けに少し詳しくするなど、媒体ごとの文章へ変換する作業にAIを使えます。
すでに企業SNSではAIを使った投稿文案の生成を支援する取り組みも行われています。広報とSNS運用を別々に考えるのではなく、一つの情報を複数の形へ展開する考え方が使いやすいでしょう。
5.取材前の情報整理をする
取材や記者対応の前に、会社・サービス・発表内容について想定質問を作る方法もあります。
「このサービスについて記者から聞かれそうな質問を10個」「経営者が答える場合と担当者が答える場合で注意点を分ける」といった形で依頼すると、準備する項目を整理できます。
ただし、想定質問への回答も事実確認は必要です。AIに会社としての公式見解を決めさせるのではなく、準備した回答案を人が確認する使い方に向いています。
6.過去の広報資料を要約する
過去のプレスリリースや社内資料が増えると、「以前どんな発表をしたか」を確認するだけでも手間がかかります。
機密情報を適切に扱える環境を用意したうえで、資料の要約やテーマ別の整理にAIを使えば、必要な情報を探しやすくできます。
新しいリリースを作る前に過去資料を確認すれば、以前と同じ内容を発表してしまうミスの防止にもつながります。
7.配信後の内容を別コンテンツへ展開する
プレスリリースは公開して終わりではありません。
内容によっては、自社サイトのお知らせ、SNS投稿、営業向けの案内、社内共有資料などへ展開できます。
AIに元の文章を渡し、「社内向けに要点を整理」「SNS向けに短縮」「営業担当向けに顧客へ説明しやすい文章へ変更」と指示すれば、同じ情報を用途ごとに作り直せます。
広報AI活用では「1本の文章を作る」より、「1つの事実情報から複数の用途へ展開する」使い方を考えると、AIを導入する意味を作りやすくなります。
広報で生成AIを使うときのプロンプト例
プロンプトは「何を作るか」だけでなく、対象者・目的・守る条件まで指定すると、修正しやすい出力になります。
たとえばプレスリリースの構成なら、次のように指示できます。
対象者:中小企業の経営者
目的:新サービスの提供開始を知らせる
必ず含める情報:サービス名、提供開始日、対象者、主な機能、利用方法
不明な情報は推測せず「要確認」としてください。
タイトル案を5案、切り口を変えて出してください。
本文を作る場合も、AIに事実を勝手に追加させない条件を入れておくと扱いやすくなります。
・提供開始日:○月○日
・サービス名:○○
・対象者:○○
・主な機能:○○
・料金:○○
事実にない実績、数字、利用者の声は追加しないでください。不明な部分は「要確認」としてください。
こうしておくと、AIが文章をきれいにする役割と、人が事実を管理する役割を分けられます。
生成AIに広報を任せるときの注意点
広報では「文章として自然か」より「公開して問題ない情報か」を優先してください。
事実と違う内容を混ぜない
生成AIは、もっともらしい文章を作れても、その内容が事実とは限りません。
特に実績、導入社数、受賞歴、料金、発売日、顧客のコメントなどは、公開前に元資料と照合します。
機密情報をそのまま入力しない
社内資料や未公開情報をAIへ入力する場合は、利用するサービスのデータ取り扱いや社内ルールを確認してください。
まだ発表していない新製品の仕様、顧客情報、契約内容などは、特に慎重に扱う必要があります。
AIが作った文章をそのまま公開しない
AIは文章の下書きには使えても、会社として何を発表するかまで自動で決めるものではありません。
公開前には担当者が内容を読み、事実関係、表現、社内承認、法務上の問題などを確認します。
「AIが作ったから正しい」と考えないこと。広報では一つの誤情報が会社の信用に関わる可能性があるため、最終確認は人が行います。
広報の生成AI活用を始める手順
最初は一つの業務だけを選び、AIに下書きをさせて人が確認する流れを作ると始めやすくなります。
STEP1:時間のかかる業務を一つ選ぶ
プレスリリース作成、タイトル案、SNS投稿、資料要約などから一つ選びます。
STEP2:AIに渡す情報を整理する
サービス名、目的、対象者、日時、数字など、事実として確定している情報をまとめます。
STEP3:AIに役割と条件を指定する
「広報担当者として」だけでなく、文字数、対象者、トーン、含める情報、推測禁止などを指定します。
STEP4:人が事実確認する
AIの文章をそのまま公開せず、元資料と照合します。
STEP5:結果を記録して改善する
どの指示が使いやすかったか、どこを毎回修正したかを残します。次回からプロンプトを改善すれば、同じ業務をさらに進めやすくなります。
「業務を1つ選ぶ → 情報を整理する → AIで下書き → 人が確認 → 結果を記録」の流れをまず1回作ってみましょう。
広報とマーケティングでAIの使い方はどう違う?
広報は「何を正確に伝えるか」、マーケティングは「誰にどう届けて行動につなげるか」という視点を持つと、AIの使い分けが分かりやすくなります。
もちろん実際の業務では両者が重なる部分もあります。SNS投稿やコンテンツ作成、情報分析などは、広報とマーケティングの両方でAIを使えます。
マーケティング側のAI活用について詳しく知りたい場合は、AIマーケティングとは?できること・活用例・始め方も参考になります。
また、社外向けの文章だけでなく日常のメール作成も効率化したい場合は、ChatGPTでメール返信を作る方法も確認できます。
広報×生成AIでよくある質問
最初から高度なAIシステムを導入する必要はありません。まずは文章作成や情報整理など、結果を人が確認しやすい業務から始めると進めやすくなります。
広報初心者でも生成AIを使えますか?
使えます。最初はプレスリリースの構成案やタイトル案、文章の要約など、出力結果を人が確認しやすい作業から始めると分かりやすいです。
生成AIにプレスリリースを全部書かせても大丈夫ですか?
下書き作成には使えますが、そのまま公開するのは避けた方が安全です。数字、日付、実績、固有名詞などを元資料と照合し、会社として公開してよい内容か担当者が確認してください。
広報でAIを使うときに最初に決めることは?
「AIに任せる範囲」と「人が判断する範囲」を決めることです。文章の案出しや要約はAI、事実確認や公開判断は人、といった役割分担から始めると運用しやすくなります。
AIで作った広報文はどこまで修正すればいいですか?
一律の基準はありません。まず事実関係を確認し、そのうえで会社の表現やブランドのトーンに合っているかを確認します。毎回同じ箇所を修正しているなら、そのルールをプロンプトに追加すると改善できます。
まとめ
広報で生成AIを使うなら、文章作成を丸ごと任せるのではなく、下書き・案出し・要約・展開などの作業を切り出すのがポイントです。
特に始めやすいのは、プレスリリースの構成作成、タイトル案、本文の下書き、SNS向けへの書き換えです。
一方で、公開する情報の正確性や機密情報の扱い、会社としての最終判断はAIに任せきりにしない方が安全です。
まずは一つの業務で試し、「AIに任せる部分」と「人が確認する部分」を決めてみてください。慣れてきたら、1本の広報情報をSNSやWeb記事、社内資料などへ展開する使い方へ広げると、活用範囲を増やせます。
なお、生成AIを社内で使う場合は、AIの利用ルールや情報管理もセットで考える必要があります。社内での安全な使い方については、AIガバナンスとは?生成AIを安全に活用するための基本も確認しておくとよいでしょう。


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